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最高裁判所第一小法廷 昭和51年(オ)1184号 判決 1977年12月12日

上告人

前田治

右訴訟代理人

田中豊恵

田中健恵

右補助参加人

青木秀吉

右補助参加人訴訟代理人

牧野芳夫

外五名

右補助参加人

矢部信夫

右補助参加人

小原幸勝

被上告人

右代表者 法務大臣

瀬戸山三男

右指定代理人

大喜多啓光

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告補助参加人青木秀吉代理人山根篤、同牧野芳夫、同下飯坂常世、同押谷富三、同中川恒雄、同池田治の上告理由第一点ないし第三点、第六点及び第七点について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。所論違憲の主張は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は単なる法令違背を主張するものにすぎない。論旨は、いずれも採用することができない。

同第四点及び第五点について

原審が認定したところによれば、(1) 明治五年八月二八日折橋政嘉及び石黒堅三郎の両名は、国の機関である東京府知事から、羽田村ほか二か村地先海岸寄洲及び海面約一五〇町歩を地代金二二五円、鍬下年孝(地租免除期間)一五年として払下げを受けた、(2) 本件払下げは明治四年八月大蔵省達第三九号「荒蕪不毛地払下ニ付一般ニ入札セシム」に基づくものであり、本件払下げ当時においては官民ともに海水の常時侵入する地所についても、開墾の目的で私人に譲渡することができるものと考えられていた、(3) その後武田忠臣は、折橋らが取得した権利を取得し、明治三三年一〇月一八日これを一三筆に分けて保存登記をし、さらに明治三四年四月二六日その一筆である番外一三番寄洲七〇町五反八畝一〇歩を地番同所一五九二番、地目雑種地、地積七〇町六反四畝二二歩と変更登記した、というのであり、右の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができる。

以上の事実関係のもとにおいて、右大蔵省達による本件払下げの対象は、国がそれまで有していた払下地所に対する排他的総括支配権であり、当時の法制によれば、海水の常時侵入する地所についても、これを払下げにより私人の取得しうる権利の対象としていたと解することができるから、本件払下げにより折橋らの取得した権利は排他的総括支配権というべきであり、これを取得した武田忠臣の排他的総括支配権は、明治三二年七月民法(明治二九年法律第八九号)が施行されるとともに民法上の土地所有権に当然に移行した(明治三一年法律第一一号民法施行法三六条参照)旨の原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、いずれも採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(団藤重光 岸上康夫 藤崎萬里 本山享)

上告補助参加人青木秀吉代理人牧野芳夫外五名の上告理由書<省略>

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